のダサイから

マキがひとりでリビングに入って来たのを確認するかのようにチラッとミクはマキの方に視線を向け、そのすぐ後に、
じゃあ、わたしもそろそろ・・・。
明日も早いんで」
と言い出した。
えっ?
も、もう帰るの?」
とナカバヤシ。
今日はすごく楽しかった。
みんなありがとう」
と言ってミクは上着を羽織り、早くも帰る体勢に入る。
ああ・・・、じゃ、じゃあ俺、そこまで送って行く」
と言ってホンジョウも自分のハーフコートを羽織る。
じゃあまた、ミクさん。
お元気で」
とトオルは爽やかに笑顔で見送る。
どうも。
あんまりしゃべれなかったけど」
とマキも軽く頭を下げる。
ミクさん、今度はみんなそろって沖縄で宴会だね?」
そう言ってナカバヤシも満面の笑顔でふたりを玄関で見送る。
マキとヒカルさんは茶沢通り沿いにあるバーレディージェーン」のカウンターに居た。
マキはウオッカトニック、ヒカルさんはジンのオンザロック。
ほろ酔いのいいオンナふたりに周辺のヤロウ客たちの視線がちらちらと向けられている。
ねえ、この店ってさあ、松田優作が常連だったって、知ってた?」
とマキ。
ええ?
知らない。
そう言えば、けっこう古い感じですものねえ、このお店」
彼の入れたアーリータイ支付寶HKムズのボトルがどっかにあるって聞いたんだけど~?
さっきから見てるんだけど、どこにもないんだよね」
とマキは店内中をキョロキョロと見回している。
すると勘違いしたようにサラリーマン風のオヤジが自分を見ていると思ったのか?マキに向かって微笑んだのだがマキは無視した。
訊いてみたらどうですか?
バーテンさんに」
いいよ。
そう言うの訊くのダサイから。
ああ、ボトルって言えば、石原裕次郎のオールドパーのボトルは赤坂東急のバーにあるんだっけか?」
ってそれ、かな大腸癌 標靶藥りどうでもいいし」
とヒカルさんは小声でつぶやく。

ねえ、ヒカルさん?
やっぱ話、戻して悪いんだけどさあ・・・、ホンジョウさんとミクさんのこと、本当に気にならないの?」
とマキはやはりどうしてもその話題に固執しているようだ。
そりゃあ、まあ。
もちろん多少は気になりますけど。
わたしは・・・、そう、好きな人には好きにやっててほしいって言うか。
基本恋愛関係って言うのは自由なものだから。
そう思ってて」
とヒカルさんは相変わらずクールで素っ気ない、特にその件に関しては。
自由って言ったって、ヒカルさん が今ホンジョウさんとつき合うってことにしちゃえばね、彼だってもう・・・ミクさんのことも忘れられるかもしれないじゃない?」
とマキは人ごとだと言うのにやけに剥きになっている。
そういう駆け引きにはわたし、興味がないだけ。
ねえ?
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